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最高裁医療判例real estate

最高裁医療判例
〇最判平7・6・9民集49巻6号1499頁

姫路日赤 医療水準

この未熟児網膜症姫路日赤事件は,「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである。」と判示し,医療水準判断の基準を明らかにした。
その場合,「履行補助者である医師等が右知見を有しなかったために、右医療機関が右治療法を実施せず、又は実施可能な他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採らなかったために患者に損害を与えた場合には、当該医療機関は、診療契約に基づく債務不履行責任を負うものというべきである。」と判示した。
また,「新規の治療法実施のための技術・設備等についても同様であって、当該医療機関が予算上の制約等の事情によりその実施のための技術・設備等を有しない場合には、右医療機関は、これを有する他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採るべき義務がある。」と判示し,実施のための技術・設備等を有しない場合の転医義務を認めた。

 主    文
上告人らの本訴請求中、被上告人に対し、上告人A1が金二三〇〇万円及び内金二〇〇〇万円に対する昭和五一年七月二四日から、内金三〇〇万円に対する昭和六三年七月一五日から各完済まで年五分の割合による金員の支払を求める部分、上告人A2、同A3が各金二三〇万円及び各内金二〇〇万円に対する昭和五一年七月二四日から、各内金三〇万円に対する昭和六三年七月一五日から各完済まで年五分の割合による金員の支払を求める部分につき原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

 理    由
上告代理人伊東香保、同山崎満幾美、同辻晶子、同本田卓禾、同小沢秀造、同藤本哲也、同小林廣夫の上告理由第一の二の1、2及び第二の二について
 一 本件は、未熟児網膜症にり患した上告人A1とその両親である上告人A2、同A3が、上告人A1出生後の保育診療に当たったD病院(以下「D」という。)を設営する被上告人に対し、診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求めるものである。原審の確定した事実関係の大要は、次のとおりである。
 1 上告人A1が未熟児網膜症と診断されるまでの経緯について
  (一) 上告人A1は、昭和四九年一二月一一日午後二時八分、姫路市内のE病院において在胎三一週、体重一五〇八グラムの未熟児として出生し、同日午後四時一〇分、Dに転医をし、小児科の「新生児センター」に入院した。上告人A1の担当医は、小児科のF医師外一名であった。上告人らは、右転医の際、被上告人との間で、上告人A1の保育、診断、治療等をすることを内容とする診療契約を締結した。
  (二) F医師は、同日、上告人A1を保育器に収容し、濃度が三〇パーセント以下になるようにして酸素投与を開始し、同月二一日午後八時まで、チアノーゼ発作等を認めた時には濃度を三四ないし三七パーセントに上げたが、それ以外は二八パーセント前後の濃度の酸素を投与し、同日午後八時以降昭和五〇年一月一六日まで、二一ないし二八パーセントの濃度の酸素を投与した。上告人A1の体重が二〇〇〇グラムを超え、体温が三六度を超え、呼吸及び脈拍が安定し、呼吸停止及びチアノーゼの症状がしばらくみられなくなったので、F医師は、同日、酸素投与を中止して上告人A1を保育器から出してみたところ、呼吸停止及びチアノーゼの症状を呈したため、再度保育器に収容し、同月二三日まで二四パーセント前後の濃度の酸素を投与した。そして、F医師は、同日、酸素投与を中止して上告人A1を保育器から出したが、同月二七日及び同年二月一三日、呼吸停止及び全身チアノーゼを生じたので、酸素ボックスによる酸素吸入をした。
  (三) この間、上告人A1は、昭和四九年一二月二七日、Dの眼科のG医師による眼底検査を受けたが、同医師は、上告人A1の眼底に格別の変化がなく次回検診の必要なしと診断した。その後、昭和五〇年二月二一日の退院時まで眼底検査は全く実施されなかった。
  (四) 上告人A1は、退院後の同年三月二八日、G医師による眼底検査を受け、異常なしと診断されたが、同年四月九日、同医師により眼底に異常の疑いありと診断され、同月一六日、F医師に紹介されて、H病院の眼科において診察を受けたところ、既に両眼とも未熟児網膜症瘢痕期三度であると診断された。上告人A1の現在の視力は両眼とも〇・〇六である。

 2 未熟児網膜症の予防及び治療法の展開について
  (一) 未熟児網膜症は、在胎三二週末満、出生体重一六〇〇グラム以下の未熟児に多く発生する未熟な網膜に起こる血管の増殖性変化を本態とする疾病であって、最悪の場合には、網膜剥離から失明に至る。患児の網膜血管の発達の未熟性を基盤とし、酸素投与が引き金となって発症することがあることは否定できないとされているが、その正確な発症機序についてはいまだに不明な点が多い。我が国の本症についての研究や診断は、従来、オーエンスが昭和三〇年までに確立した分類法(本症の臨床経過を活動期、寛解期及び瘢痕期の三期に分けるもの)に従って行われてきたが、昭和四六年ころから、本症の病態についての研究が進み、右分類に修正が加えられ、さらに急激に進行する激症型の存在も確認されるに至った。
  (二) 我が国においては、未熟児に酸素を投与することが少なかったため本症の発生は少なかったが、昭和三九年、I大学医学部眼科のJ講師が、未熱児に対する酸素療法の普及に伴い本症の発生が増加していること、本症の発生は酸素と関連があり、酸素濃度を四〇パーセント以下にしても発生し得ることなどを指摘し、その予防、早期発見及び早期治療の観点から、眼科、小児科及び産科の協力の下、発症頻度の多い生後三週間までの定期的眼底検査及びその後半年に一回程度の眼底検査が望ましい旨を強調した。本症の発生予防のための酸素投与の方法については、昭和四〇年代後半まで、一般的指針となるような統一見解はなく、酸素濃度を四〇パーセント以下にとどめ、投与期間が極端に長くならないように注意するというのが一般臨床医の間での一応の指針となっていたが、昭和四五年ころには、本症の発生予防のためには保育器内の酸素濃度を指標として酸素管理をしても意味がなく、むしろ未熟児の動脈血酸素分圧を測定して酸素管理をすべきであるとの見解も唱えられるに至っていた。
  (三) K病院の眼科医Lは、昭和四二年秋の日本臨床眼科学会において、同年三月に本症二例について光凝固法を施行して病勢の進行を停止させることに成功した旨を報告し、昭和四三年四月、この報告が雑誌「臨床眼科」二二巻四号に掲載され、治療の可能性を示して注目され、さらに、昭和四五年五月、四例の光凝固法施行結果を発表した。
  (四) その後、昭和四六年ころから、各地の先駆的研究者によって光凝固法の追試が行われ、光凝固法が本症の進行を阻止する効果があるとの報告が相次ぎ、また、昭和四七年、M大学医学部のNが光凝固法と同様の作用機序を持つ冷凍凝固法を施行したと発表した。そして、昭和四七年ころには、本症の発生率が約一〇パーセントであり、そのうち自然治癒するものが七〇パーセント前後ある反面、急激に症状が悪化する症例があることも明らかになり、光凝固法について、右の自然治癒率との関係から施術の適応について議論がされ、また、施術の適期等についてはなお研究を要することが指摘され、その後も先進的医療機関において右の課題解明の努力が続けられていた。
  (五) 未熟児の眼底検査をし、本症の発生、進行程度等を的確に診断することができるようになるには、適当な指導者に就いて相当期間の修練と経験を積む必要があるが、昭和四九年に至っても、本症を的確に診断することができる眼科医が少ないこと、そのための教育施設が乏しいことなどが指摘されていた。
  (六) 光凝固法は、本症の治療について新しい局面を開いたが、本症の病態、光凝固法の施術の適期等に関して研究者間で区々の報告がされるきらいがあったので、厚生省は、昭和四九年、本症の診断と治療に関する統一的基準を定めることを主たる目的として、主任をI大学医学部眼科のJ教授として本症の指導的研究者らによる研究班を組織した。厚生省研究班は、昭和五〇年三月、当時における研究成果を整理し、最大公約数的な診断基準となるものを作成し、発表した。そして、これは、同年八月、雑誌「日本の眼科」四六巻八号に掲載された。右厚生省研究班報告は、本症を、主に耳側周辺に増殖性変化を起こし、活動期の経過が比較的緩徐で自然治癒傾向の強いI型と、主に極小低体重児の未熟性の強い眼に起こり、初発症状から急速に網膜剥離に進むII型に大別し、そのほかに両者の混合型もあるとした上、進行性の本症活動期病変に対して適切な時期に行われた光凝固法が本症の治療法として有効であることが経験上認められるとして、I型については、活動期の三期に入り、更に進行の徴候があることを見極めて凝固治療をすべきであり、U型については、血管新生期から突然網膜剥離を起こすことが多いので、治療の決断を早期に下さなければならず、無血管領域が広く全周に及ぶ症例では、血管新生と滲出性変化が起こり始め、後極部血管の紆曲怒張が増殖する徴候が見えたら直ちに凝固治療をすべきであるなど光凝固法の適応・適期・方法などについて一応の治療基準を示した。
  (七) 昭和五七年度に厚生省研究班が再度組織され、本症の臨床経過がより明確にされた。しかし、本症に対する治療法として光凝固法が有効なものであるかについて疑問を呈する見解も存する。

 3 Dにおける未熟児の保育診療体制について
  (一) Dにおいては、昭和四八年一〇月ころから、小児科医のF医師が中心になり本症の発見と治療を意識して小児科と眼科とが連携する体制をとり、眼底検査は、小児科医が患児の全身状態から眼科検診に耐え得ると判断した時期に眼科のG医師に依頼して行い、次回の検診時期は同医師が指示することとし、眼底検査の結果本症の発生が疑われる場合には、光凝固法を実施することのできるH病院に転医をさせることにしていた。
  (二) F医師は、本症と酸素との関連、治療法として光凝固法があることを知っていたが、本症の臨床経過等の認識はなく、G医師は、未熟児の眼底検査及び本症の診断についてあまり経験がなく、特別の修練も受けていなかった。

 二 原審は、右一の事実関係の下において、次のとおり判断した。
 1 医療に従事する者は、最善を尽くして患者の生命及び健康を管理する注意義務を負うが、その注意義務の基準は、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であり、医療従事者がこの義務に違反して患者の生命、身体を害する結果をもたらした場合には、診療契約上の不完全履行の責任を問われるが、医療行為が医療水準に照らして相当と認められる限り、義務違反はなく責任を負うことはない。

 2 未熟児に対する眼底検査は、光凝固法が未熟児網膜症の有効な治療方法であって、酸素投与をした未熟児については常に光凝固法の施術を念頭に置いて観察すべきことが医療水準として定着している場合に、光凝固法施術の適期を把握するのに必要な手段として機能するものであるところ、右一の2の認定によれば、上告人A1が出生した昭和四九年当時、光凝固法は、有効な治療法として確立されていなかったものであり、治療基準について一応の統一的な指針が得られたのは厚生省研究班の報告が医学雑誌に掲載された昭和五〇年八月以降であるから、Dが本症を意識して、未熟児に対する眼底検査をし、本症の発生が疑われる場合に転医をさせていたとしても、担当医師において、未熟児に対し定期的眼底検査及び光凝固法を実施すること、あるいはこれらのために転医をさせることが法的義務として確立されていたものとすることはできない。

 3 したがって、F医師及びG医師が生後一六日に上告人A1の眼底検査を実施しただけで、その後退院まで実施せず、そのための転医をさせなかったからといって、右両医師に義務違反があるとはいえない。また、未熟児網膜症の臨床経過は多様で、これを的確に診断することは特別の修練と経験を積まなければ困難であるから、その経験のないG医師が上告人A1の診断時に本症の発生を確認することができなかったとしても、やむを得ない。

 三 しかしながら、原審の右判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 1 被上告人は、昭和四九年一二月一一日午後四時一〇分に上告人A1がE病院からDに転医をするに際し、上告人らとの間で、未熟児として出生した上告人A1の保育、診断、治療等をすることを内容とする診療契約を締結したのであるが、被上告人は、本件診療契約に基づき、人の生命及び健康を管理する業務に従事する者として、危険防止のために経験上必要とされる最善の注意を尽くして上告人A1の診療に当たる義務を負担したものというべきである(最高裁昭和三一年(オ)第一〇六五号同三六年二月一六日第一小法廷判決・民集一五巻二号二四四頁参照)。そして、右注意義務の基準となるべきものは、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準である(最高裁昭和五四年(オ)第一三八六号同五七年三月三〇日第三小法廷判決・裁判集民事一三五号五六三頁参照)。
 2 そこで、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準とはどのようなものであるかについて検討する。
 ある疾病について新規の治療法が開発され、それが各種の医療機関に浸透するまでの過程は、おおむね次のような段階をたどるのが一般である。すなわち、まず、当該疾病の専門的研究者の理論的考案ないし試行錯誤の中から新規の治療法の仮説ともいうべきものが生まれ、その裏付けの理論的研究や動物実験等を経た上で臨床実験がされ、他の研究者による追試、比較対照実験等による有効性(治療効果)と安全性(副作用等)の確認などが行われ、この間、その成果が各種の文献に発表され、学会や研究会での議論を経てその有効性と安全性が是認され、教育や研修を通じて、右治療法が各種の医療機関に知見(情報)として又は実施のための技術・設備等を伴うものとして普及していく。疾病の重大性の程度、新規の治療法の効果の程度等の要因により、右各段階の進行速度には相当の差が生ずることもあるし、それがほぼ同時に進行することもある。また、有効性と安全性が是認された治療法は、通常、先進的研究機関を有する大学病院や専門病院、地域の基幹となる総合病院、そのほかの総合病院、小規模病院、一般開業医の診療所といった順序で普及していく。そして、知見の普及は、医学雑誌への論文の登載、学会や研究会での発表、一般のマスコミによる報道等によってされ、まず、当該疾病を専門分野とする医師に伝達され、次第に関連分野を専門とする医師に伝達されるものであって、その伝達に要する時間は比較的短いが、実施のための技術・設備等の普及は、当該治療法の手技としての難易度、必要とされる施設や器具の性質、財政上の制約等によりこれに要する時間に差異が生じ、通常は知見の普及に遅れ、右の条件次第では、限られた医療機関のみで実施され、一般開業医において広く実施されるということにならないこともある。
  以上のとおり、当該疾病の専門的研究者の間でその有効性と安全性が是認された新規の治療法が普及するには一定の時間を要し、医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性、医師の専門分野等によってその普及に要する時間に差異があり、その知見の普及に要する時間と実施のための技術・設備等の普及に要する時間との間にも差異があるのが通例であり、また、当事者もこのような事情を前提にして診療契約の締結に至るのである。したがって、ある新規の治療法の存在を前提にして検査・診断・治療等に当たることが診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準であるかどうかを決するについては、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきであり、右の事情を捨象して、すべての医療機関について診療契約に基づき要求される医療水準を一律に解するのは相当でない。そして、新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準であるというべきである。そこで、当該医療機関としてはその履行補助者である医師等に右知見を獲得させておくべきであって、仮に、履行補助者である医師等が右知見を有しなかったために、右医療機関が右治療法を実施せず、又は実施可能な他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採らなかったために患者に損害を与えた場合には、当該医療機関は、診療契約に基づく債務不履行責任を負うものというべきである。また、新規の治療法実施のための技術・設備等についても同様であって、当該医療機関が予算上の制約等の事情によりその実施のための技術・設備等を有しない場合には、右医療機関は、これを有する他の医療機関に転医をさせるなど適切な措置を採るべき義務がある。

 3 これを本件についてみると、前記一の事実関係によれば、(1) 光凝固法については、K病院の眼科医Lによる施術の報告後、昭和四六年ころから各地の研究者によって追試が行われ、右治療法が未熟児網膜症の進行を阻止する効果があるとの報告が相次いでいたところ、厚生省は、本症の病態や光凝固法の施術時期等に関する各地の研究者による研究成果を整理して、診断と治療に関する最大公約数的な基準を定めることを主たる目的として、昭和四九年度厚生省研究班を組織し、右研究班は、昭和五〇年三月、進行性の本症活動期病変に対して適切な時期に行われた光凝固法が治療法として有効であることが経験上認められるとし、一応の診断治療基準を示した研究成果を発表した、(2) Dにおいては、昭和四八年一〇月ころから、光凝固法の存在を知っていた小児科医のF医師が中心になって、未熟児網膜症の発見と治療を意識して小児科と眼科とが連携する体制をとり、小児科医が患児の全身状態から眼科検診に耐え得ると判断した時期に、眼科のG医師に依頼して眼底検査を行い、その結果本症の発生が疑われる場合には、光凝固法を実施することのできるH病院に転医をさせることにしていた、(3) Dは、既に昭和四九年には、他の医療機関で出生した新生児を引き受けてその診療をする「新生児センター」を小児科に開設しており、現に、上告人A1も、同年一二月一一日にE病院で生まれたが、Dの診療を受けるために転医をしたというのである。そうすると、Dの医療機関としての性格、上告人A1がDの診療を受けた昭和四九年一二月中旬ないし昭和五〇年四月上旬の兵庫県及びその周辺の各種医療機関における光凝固法に関する知見の普及の程度等の諸般の事情について十分に検討することなくしては、本件診療契約に基づきDに要求される医療水準を判断することができない筋合いであるのに、光凝固法の治療基準について一応の統一的な指針が得られたのが厚生省研究班の報告が医学雑誌に掲載された同年八月以降であるというだけで、上告人A1がDの診療を受けた当時において光凝固法は有効な治療法として確立されておらず、Dを設営する被上告人に当時の医療水準を前提とした注意義務違反があるとはいえないとした原審の判断には、診療契約に基づき医療機関に要求される医療水準についての解釈適用を誤った違法があるものというべきであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
 論旨は以上の趣旨をいうものとして理由があり、その余の点を判断するまでもなく、原判決は上告人らの不服申立てに係る部分につき破棄を免れない。そして、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    河   合   伸   一

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